フォーチュンクエスト二次創作コーナー


トラップ×パステル×クレイ

 それは男として当然の欲求だろうと思う。
 大体あいつだって、同じ年頃の男だらけのパーティーにとびこんできた時点で、覚悟を決めておくべきだったんだ。
 そう、俺は悪くねえ。絶対に悪くねえ。
 いや。
 俺「だけ」が悪いんじゃねえ。
 それだけは、絶対に確かだ。

「あー……ヤりてえ……」
「何を?」
 ぼそり、とつぶやいた言葉に返事がとんできて。俺は、驚いて顔を上げた。
 現在、野宿の真っ只中。
 ただし、クエストの最中ってわけじゃねえ。情けねえ理由だが、貧乏の余り宿代が払えなくなってやむなく外で寝ることになった……というのが真相だ。
 もっとも、宿代を払えなくなった理由については……俺は、決して大きな顔はできねえが。
 まあ、それはともかく。
 他の連中は、最初のうちこそ揃ってぶうぶうと文句を言っていたもんだが。文句を言ったところでどうなる問題でもねえ、というのがわかったんだろう。こんなことに慣れきってる冒険者というのも哀しい話だが。
 てきぱきと野宿の準備を整えて、粗末な保存食で夕食を済ませて。後は寝るくらいしかやることがねえ、と、揃って毛布に包まっている。
 俺が起きていた理由は、火の番をするため。もう後何時間かしたらクレイと交代で、それまで誰も起きてくるわけがねえ、と、そう思っていたから。その呑気な声に、心底びびらされた。
「あんだ、クレイ。起きてたのか。疲れてんじゃねえのか?」
「クエストの最中ってわけでもないからな。そんなには疲れてないよ」
「んじゃあ、俺の分も火の番やってくんねえ?」
「断る」
「冗談だっつーの」
 素っ気無く返された言葉にわざとらしい舌打ちを返して、そうして、二人同時に吹き出した。
 周囲から聞こえてくるのは呑気な寝息ばかり。そんな中、ぱち、ぱち……と燃え盛る炎を見つめる、俺とクレイ。
 そういやあ、このパーティーを組んでから、二人っきりで話すなんて久しぶりだな。
 不意にそんなことに気づいて顔を上げると、ちょうどクレイも、俺を見ているところだった。
 心の奥底まで見透かされそうな、素直な視線。
 そんなものに、言いようのない罪悪感がもたげてきて。俺は、思わず目をそらした。
 罪悪感。一人だ、ということに油断して、頭の中で繰り広げていた……
「何をやりたいんだ?」
 その瞬間。
 まるで、俺の心を読んだのか、というようなタイミングで、クレイの声がとんできて。俺は、今度こそ、文字通りの意味でとびあがった。
「どうしたんだおまえ? 具合でも悪いのか?」
「い、いや、別に何も」
「疲れてるのなら、火の番、代わってやってもいいけど」
「いや、いい! 大丈夫だ! 別に身体は何ともねえっ!」
「そうか? ならいいけどな。無理はするなよ」
 ほがらかに笑うクレイ。その顔をまともに見れなくて。俺は、高鳴る心臓を必死に押さえ込んだ。
 気づかれるな、気づかれるな。
 俺が何を考えているのか……クレイに……
 ……って、よく考えたら、隠すほどのことか?
 それは、多分聞いているのがクレイしかいねえ、という、解放感。
 気心の知れた幼馴染。それこそ生まれたときから一緒に過ごしてきた相手だった。俺はあいつの何もかも知っている、と断言できるし、それは多分クレイもそうだろう。
 そう。俺達は親友だ。だったら……隠す意味は、無いんじゃないか?
 むしろ。
 あいつだって、男なんだから。
 俺の悩みを、わかってくれるんじゃないだろうか?
「聞いてたんだよな」
「何を?」
「さっきの、俺の言葉」
「ああ」
 俺の問いかけにあっさりと頷いて。クレイは、興味津々、といった様子で、膝の上で頬杖をついた。
「聞こえた。何かやりたいことでもあるのか?」
「ああ。すっげえある」
「何を?」
 無邪気な顔をして聞くクレイに、自然と、意地悪な笑みがこみあげるのがわかった。
 俺が何を考えているのか。この鈍感な幼馴染は、本気で何一つわかってねえ。
 こいつだって男である以上、同じ苦しみを、絶対に抱えているはずなんだが。
「女と」
「……へ?」
「女とヤリてえ」
 そう言った瞬間、最初にクレイの顔に浮かんだのは、疑問。
 何を言っているのか、と、最初はそんな顔で俺を見つめていたが。
 その顔が真っ赤に染まるのに、大した時間はかからなかった。
「な、何っ……おまえっ……」
「おーおー、赤くなっちゃって。初心だねえ、クレイちゃん?」
「おまえなあっ!?」
「だってよー、しょうがねえだろ? 俺だって若い男なんだよ。それもヤリたい盛りの、な」
「だ、だからって」
「それとも何か? おめえ、まさか全然そんなことに興味ねえとでも? おいおい、それはかえっておかしいぜ、不健康だぜ? あ、それともあれか! おめえまさか、女じゃなくて男に興味があるとでも……」
「そそ、そんなわけないだろうっ!?」
 俺の言葉を凄い勢いで遮って、クレイは、ぜいはあと大きく息をついた。
 マジになるなっつーの。そこまで焦る姿を見ると、まさか図星をついたのかと不安になるだろうが。
「冗談だよ、冗談。そうだとしたら、これまでずーっと一緒に居た俺が綺麗な身体でいるわけないもんなあ?」
「綺麗っ……あ、あのなあっ!」
「だあら、おめえだって男。俺も男。それも、性欲を持て余した、一番そーいうことに興味のあるお年頃……自分の欲望に素直になって、何が悪い?」
「…………」
「おめえを親友だって信じてるからこそ、ここまで打ち明けたんだぜ? それもこれも友情の証だよ、証!」
「友情って……」
「んで? おめえはどうなんだよ?」
 からかうような口ぶりで目を覗きこむと、さっ、とそらされた。
 けれど、俺にはわかる。長い付き合いだし、もともと、クレイは嘘のつけねえ性格だ。
 そらした目に揺れていたのは戸惑いの色。そして、その表情に浮かんでいたのは、迷いの色。
「そりゃ……」
「安心しろよ。今聞いてるのは俺だけだ。他の連中はみんな寝てる。男同士の秘密、って奴だよ」
「…………」
「言ってみろよ? 腹に抱えてるより、言っちまった方が、素直になるぜ?」
 肩を抱くようにして、クレイの耳元で囁いてやる。囁きながら背後をうかがったが、幸いなことに、他の連中が起きてくる様子はねえ。
 俺の次の火の番はクレイだった。つまり、当分、他の連中が起きてくることはねえ、ということ。
 そして、クレイの次の当番は……
「そりゃ、俺だって、男なんだから」
 そうして。
 観念したのか、クレイが苦しそうな声でつぶやいたのが、それから数分後のこと。
「お前の気持ちがわからないわけじゃないし、正直、そういう思いに振り回されそうになったことは、ある」
「やっぱりな」
「けど、それは口に出すべきじゃないってくらいの分別はついてる」
 きっ、と顔を上げて。クレイは、毅然とした顔で言った。
「俺はパーティーのリーダーとして、何よりもみんなとうまくやっていくことを考えている。そうである以上、そんなことは思っていても絶対に口に出せない」
「ふうん」
「……お前、何、考えてるんだ?」
「いや?」
 口では立派なことを言いながらも。
 クレイの視線が、俺を通して、俺の背後に注がれていることは、わかっていた。
 俺達の様子になんざ何も気づくことなく、平和に眠りこけている、一人の女……
 暗闇の中、辺りを照らすのは焚き火だけ。その小さな小さな光の中に浮かぶのは、眩しいくらいに白い、ふともも。
 野宿を決行した理由の一つに、春が来たから、というのもある。真冬だったら何とか宿代をひねり出そう、無理ならどこかで小屋でも借りようと考えただろうし、風邪でもひきこんだら厄介なことになるから、しっかりと厚着をして横になったはずだ。
 だが、季節は春。それも、もう焚き火の必要はねえんじゃねえか、というくらいにいい陽気の、春。
 ブラウスにミニスカートといういつもの軽装。地面に毛布をひいて、ブーツを脱いで横になっている、女。
 最初のうちこそはしっかりと毛布を身体に巻きつけていたが。寝ている間に暑くなったんだろう。いまや、その毛布は乱れに乱れていて……
「あいつ、胸はねえけど。でも、結構いい身体してると思わねえ?」
 ささやいた言葉に、クレイの肩が、ぴくりと揺れた。
「顔だって、まあ手放しで褒めてやるほどじゃねえけど、そこそこいい線行ってるとは思うし。歩き回ってるせいだろうな。綺麗な脚してるしな。ああして見ると……」
「トラップ」
「あいつだって、立派な女だよな」
「トラップ!!」
 つぶやいた瞬間、凄い力で胸倉をつかみあげられた。
 けれど、それは予想していたこと。そんな顔で見上げると、真っ赤になったクレイと、まともに視線がぶつかった。
「お前、自分が何言ってるのかわかってるのか?」
「俺はまだそこまで耄碌はしてねえ」
「お前……パステルのことを、そんな目で見てたのか!?」
「そんな目? そんな、ってどんな目だよ?」
 まともに聞き返してやると、クレイの表情が、強張った。
 悟ったんだろう。今、俺の言っている言葉が、冗談でも何でもない……本気の言葉なんだ、ということが。
「言ってみろよ?」
「…………」
「言えねえのか? あー、なら俺が言ってやる。おめえと同じような目、だよ」
「違う!」
「何が違う?」
「…………」
 ムキになって否定してくるか、とも思ったが。クレイは、思った以上に脆かった。
 ……いや。
 根が生真面目で、適当に遊んで適当に欲望を解消する、ってことを知らねえ奴だ。
 その苦しみは、もしかしたら、俺よりもよっぽど深かったのかもしれない。
 全くパステルも残酷な奴だ。年頃の男二人をここまで惑わせておいて、本人には、一切その自覚が無いと来ている。
 本当に、残酷な奴だ。
「彼女は……仲間だ。そんな目で見ることは許されない」
「だけど、あいつは女だぜ?」
「…………」
「俺達は、男。いくらあいつがお子様だからって……まさか、この意味、わかってねえはずがねえよな?」
「わかってるわけがないだろう!? トラップ、お前……」
「ああ、わかってねえだろうな。けど、だからこそ、わからせてやる必要があるんじゃねえの?」
「…………」
「俺達はなあ、一生あいつの傍に居てやれるわけじゃねえんだよ。いつかは絶対に別れの日が来る。あいつが俺達についてきたのはいくつのときだった? 14か? 5か? どっちにしろ、何も知らねえお子様だった。そして、今でも知らねえ。男っつーのがどんな生き物なのか」
「…………」
「知らねえまま放り出すこと。そっちの方が、よっぽどひどいんじゃねえか?」
「…………」
 クレイの瞳に揺れるのは、迷い。
 何に迷っているのかは明白だ。俺の言葉が詭弁でしかなくて、決してパステルのためを思っているわけじゃねえことがわかっていて……それでも、欲望に振り回されそうになっていることに対する、嫌悪。
 理性か、欲望か。せめぎあいは、ほんの一瞬。
「おめえがどう思おうとそりゃおめえの勝手だけどな、でも、多分俺の我慢はそう長くは続かねえぜ?」
「…………」
「あいつのあの性格だ。甘い言葉囁いてやりゃあ、簡単に堕ちるだろうな……俺が独り占めしても、いいのか?」
「…………!」
「決めるのは、おめえだ」
 卑怯な言葉だとはわかっていながらも、言わずにはいられなかった。
 たきつけてやらなければ、このどこまでも人のいい幼馴染は、どれだけ苦しむことになろうが我慢し通すことはわかっていたから。
 同じ男として、自分に決してわがままにはなれないクレイが哀れでもあった。
 色々な理由が重なって。今、俺達は、こうしている。

 いくら他の連中が寝ているとは言え、いくら何でもここじゃまずいだろう。
 目配せをして、そっと歩み寄る。
 俺達の様子に気づく様子もなく、平和に眠りこけている……パステル。
 その胸にしがみついているルーミィをひっぺがすのに、少しばかり苦労したが。手先の器用さには、自信がある。
 小さな指を何とか振りほどいて、体よく、隣のノルに押し付ける。幸いなことに、ルーミィは何も気づかず、平和に眠りこけている……
 事が終わるまで、大人しくしてろよ。
 胸の中だけで囁いて、そっとクレイと視線を交し合った。
 チャンスは、ほんの一瞬。
「……ん?」
 さすがに様子がおかしいことに気づいたのか、パステルが、ゆっくりと目を開けた。
 けれどそのときには。あいつの身体は、クレイの腕の中に収まっていた。

「……え? 何……?」
 寝ぼけた声を上げるパステル。その顔に浮かんでいるのは、戸惑い。
 自分がクレイに担がれて、皆と引き離された。それはわかっているんだろうが、どうしてそんなことになったのかがわからない。そんな顔で……
「ええと……クレイ? トラップ……?」
「起きたかよ。悪かったな、いい気持ちで寝てたところを」
「……えと、交代の、時間?」
 ようやく目が覚めたのか。その瞳が、徐々に焦点を結んで……
 そうして、辺りに俺とクレイしかいねえ……見張るべき焚き火もねえ、ということに気づいたとき。あいつの目に浮かんだのは、強い戸惑いと、不安。
「何? 何かあったの?」
「いや……その……」
 訴えるような視線を受けて。クレイが、困ったように口ごもった。
 やっぱりやめた方がいいんじゃないか、と。あいつの目は、そう言っていたが……
 そこでやめられるようなら、最初から、こんなことはしてねえ。
 男ってのは、そういうもんだ。
「退屈だったから、相手して欲しかったんだよ」
「……え?」
「おめえに、ぜひとも俺達の相手をして欲しくてな」
「えと……相手って。でも……」
「クレイ」
 ちらっ、と視線を向けると。クレイは、観念したように頷いて……
 そして、背後から、パステルの手首をつかみあげた。
「……え」
「相手。つまり、こういう、相手」
 どうせ、パステルには何のことだかわからねえだろう。無駄な口上は、必要ねえ。
 そのまま華奢な身体にのしかかっていった。地面に押さえつけられたとき、パステルの顔に浮かんだのは。今まで一度として見たことのねえ、恐怖の、表情。
「やっ……と、トラップ!? クレイ!?」
「クレイ、しっかり押さえとけよ。暴れたら面倒だ」
「何っ……んぐうっ!!」
 なおも何かをわめこうとする口に、強引に手ぬぐいを押し込んで。
 そのまま一気にブラウスのボタンを外すと、すさまじい勢いで、身体が、はねた。
「暴れるなっつーの! おめえ、痛い目見たくなかったら大人しくしろ!!」
「お、おい、トラップ!」
「本当だぜ? どうせこいつだって初めてに決まってる。女の最初ってのはなあ、噂に聞けば、そりゃあ痛いもんらしいぜえ? しっかりほぐして、濡らしてやらねえとな」
「……いや、だけど……」
「下手にばたばた暴れて抵抗したって結果は変わりゃしねえんだよ。それともクレイ、おめえ、今更やめられるのか?」
「…………」
「やめられるなら、最初っからこんなことしてねえよな?」
「…………」
 沈黙は、肯定と同じ。
 俺を咎めるような台詞を吐きながらも。クレイの目は、パステルの胸に釘付けになっていた。
 小さい小さいと馬鹿にしていたが、どうしてどうして……
「さあて、パステルちゃん?」
 涙で真っ赤になった目をのぞきこんで、くいっ、と顎をつかみあげる。
 俺と、クレイ。二人の顔を、見せつけるようにして。
「なるべく痛い思いはさせねえようにしてやるから、安心しろよ。おめえにだっていい目見させてやる。パーティーの仲間なんだからなあ……?」
 痛いくらいにつっぱってくる下半身を自覚しながら、下着に包まれた胸を、そっと撫でる。
 ぐいっ、と手をねじいれてやれば。想像以上の柔らかさが返ってきて、反射的にむしゃぶりつきたくなった。
「助け合いは、大事だよな? 俺とクレイを助けてくれよ。おめえにしか、できねえんだ」
 下着を強引に押し上げて、胸をさらけ出す。
 桃色の突起に舌を這わせると、くぐもったようなうめき声が漏れた。
 大きな目に浮かぶのは、涙。そして、その涙から、必死に目をそらしているクレイ。
 ……安心しろ。
 最後には、何も言わせねえ。痛いまま、怖いまま終わらせたりは、しねえから。

 クレイに押さえる係りだけやれ、なんて言うつもりはねえ。そりゃ生殺しってもんだろう。
 散々に指と舌で身体をいたぶってやれば、こんなお子様でも「快感」を感じるくらいに身体は成長していたらしく。その身体から、徐々に力が抜けて行った。
 それは、ひょっとしたら「どうにもならない」という諦めがさせたことなのかもしれねえが。
 まあ、確かにな。パステルは冒険者として普通の女よりは鍛えているだろうが。俺とクレイ、二人かかりで襲われて、敵うわけもねえか。
「クレイ、おめえも触ってみろよ。ちっと感動するぜえ?」
「いや……お、俺は……」
「ここまで来ていい子ぶるなっつーの。触ってみてえんだろ?」
「…………」
「本当に固くなるもんなんだな。これが感じてる、ってことなんだろうなあ……ほれ、一個貸してやるから、触ってみ?」
「…………」
 ごくり、と、息を呑む音が聞こえた。
 ついで、俺の脇からおそるおそる伸びてきたのは、俺よりもずっと大きくて鍛えられた、無骨な、手。
「どうだよ?」
「……本当に、柔らかいな……」
「なあ? 俺達にゃあねえもんだからなあ。ほれ、触るだけじゃなくて、動かしてみろよ」
「う、動かすって!」
「こいつだって、それを望んでるぜ? なあ?」
「…………」
 当たり前だが、返事はなかった。最初から期待はしてねえが。
「ほれ、見てみろよ」
「…………」
 胸への愛撫をクレイに任せて、太ももを抱え上げるようにして、下着をずりおろす。
 初めて触れるその場所は、微かに濡れていた。下着に染みを作るくらいに。
「や〜らしいですねえ、パステルちゃん? 案外、おめえもこうされるのを待ってたんじゃねえの?」
「…………」
「大声出さねえって誓ったら、さるぐつわ、とってやるけど? 我慢するのも辛いだろ?」
「…………」
 無言で首を振られた。それが、さるぐつわをとって欲しい、という意味なのか。ありいは、俺の言葉に対する否定なのか。それは、俺にもわかりかねたが。
「トラップ……」
「そうそう。後なあ……俺、ずーっと不思議に思ってたんだけどよ。女のアソコって、どうなってんだろうな?」
「ぶっ……おまっ……」
「いや、だってさあ、俺達の間に当然あるもんが、女にはねえんだぜ? トイレとかどうしてんのかなあって、ずっと不思議だったんだよ。おめえは考えたことねえか?」
「……や、その……」
「見てみろよ」
 がっ、と、乱暴に脚を押し開くと、さすがに抵抗された。
 だが、じたばたもがく脚は、隣から伸びてきた手が、苦もなく押さえ込んでくれて。俺達は、悠々と「ソノ場所」を、拝むことが、できた。
「へええ……こうなってんだな……」
「…………」
「お、クレイ。真っ赤になっちゃって。どうだよ? まさかもうぶちこみたい、とでも?」
「っ……や……」
「大きくなってんじゃねえのー? 安心しろ、それが普通の反応だって。この状況で何も反応しねえ奴がいたら、そっちの方が危ねえよ」
「…………」
「これが普通の男、って奴なんだよ、パステル?」
 囁くと、びくり、と、押さえていた脚が、震えた。
 自分がこれからどうなるのか、何をされるのか……それは、十分にわかっているんだろう。
 怯える目が、余計に欲情を煽っていることをわかってねえのが、色々な意味で致命的だとは思うが。
「さて、と。どうするよ、クレイ?」
「ど、どうする……って……」
 手を伸ばして、桃色に光るソコを撫でてやる。指にまとわりつく粘性の液体を弄んで、わざとらしくなめあげると、パステルの顔が真っ赤に染まった。
 ……甘いっつー噂聞いたけど、あれはデマだな。まあ、信じていたわけじゃねえが。
「どっちがいい?」
「どっちって……」
「前と後ろ、どっちがいいか、って聞いてんの」
「後ろって!!」
 とろとろと、透明の液体の溢れる場所。
 そこを指で撫でた後、そっと下の方にずらしていく。それだけで、どこを指しているのかがわかったんだろう。クレイは、必死で首を振った。
「それはっ……さすがにまずいんじゃないか!?」
「何で? 普通三人っつったらそういう形らしいぜ? あー、でも確かにきつそうだな。指も入んねえし」
「と、トラップ……」
 触れると、パステルの身体は必死の抵抗を見せた。
 何とか逃れようと、身をよじっていた。さすがに、こんな場所までいじられるとは、思ってもいなかったらしい。
 そりゃ、確かに怖いだろうな。前だって初めてだっつーのに、いきなり後ろも、っつーのはなあ……
「けどよ、んじゃ、一人がぶちこんでる間、もう一人は指くわえて見てるのか? それって何か嫌じゃねえか?」
「嫌って……」
「後からぶちこむ方は、先にぶちこんだ奴が出したもん、自分のナニになすりつけることになんじゃね?」
「……おまえ、よくそういうこと思いつくなあ……」
「嫌そうな顔すんなよなあ、俺だって言いたくねえよ。けど、おめえが後ろはどうかって言うから教えてやっただけじゃねえか。おめえが構わないって言うのなら、俺が先にヤらせてもらうけど?」
「お、俺だって嫌だぞ! 冗談じゃない!」
「んじゃあ、ここまで来て、おめえは見てるだけか?」
「…………」
 迷いは、割と短かった。ここまで来たら、と、腹をくくったのかもしれない。
「ごめん、パステル。さ、最初は痛いかもしれないけど……我慢、してくれるか?」
「…………」
「嫌そうな顔すんなよなあ。あ。そーだ。んじゃあ、口でもいいぜ? よく考えたら前と後ろ一緒にやんのって、体勢的にきつそうだしな。どっちがいい? おめえに選ばせてやる」
 脚の間に顔を割り込ませるようにして、十分に濡れていることを、舌で確かめてやった。
 無駄口を叩きながらも、二人がかりで胸を、背中を、脚を、考えられるありとあらゆる性感帯を攻め立てたせいだろう。既にその場所は、ぐっしょりと濡れそぼっていて。知らずに見たら漏らしたのかと聞きたくなるような有様だった。
「どっちがいい? ああ、わかってるとは思うけど、大声はぜってー出すなよ。おめえ、みんなに今の自分の姿、見せるつもりか?」
「…………」
「どっちが、いい?」
 耳たぶを噛むようにして、囁きかける。
 猿轡をはずしてやると、何度も噛み締めたせいか、ボロボロになったそれの奥から、大きな大きな息が漏れた。
 やけに甘ったるい、喘ぎ声としか思えない、息が。
「お、お尻は……やだよ。怖い、よ……」
「おーおー。受け入れることに依存はねえ、ってか。意外とすきもんだな、おめえ」
「…………」
「まあいいや。んじゃあ一人はおめえが口で慰めてくれる、と。わかってるとは思うけど、俺達にここまで奉仕させたんだから、おめえもしっかり働けよ? 自分だけ楽しようなんて思うなよ?」
「おい、トラップ! おまえいいかげんに……」
「黙れクレイ。んで、どっちがいい?」
「…………」
「どっちの奴を口で慰めてやりてえ? おめえが好きな方選んでいいぜ? 残った方は下の口で満足させてもらうからな。気にする必要はねえぞ?」
「…………」
 伏せたパステルの目から、ぽろりと、涙が、零れ落ちた。

 事が終わった瞬間、パステルの身体から、糸が切れたように力が抜けた。
 それと同時に、俺とクレイも、荒い息をついてへたりこんだ。
「あー……すっきりした」
「…………」
「おめえもだろ?」
「……まあな……」
 気まずそうな顔で服装を整えるクレイ。その顔には、隠しきれない罪悪感が零れでていたが。
 けれど。あいつだって満足してねえはずがねえ。正確に数えたわけじゃねえが、少なくとも三発は放っていた。
 ちなみに、俺は五発。勝った、と喜ぶべきなんだろうか、これは。
「さんきゅ、パステル。すっげー良かった。今まで散々馬鹿にして悪かったな。おめえ、いい身体してるよ。認めてやる。おめえはいい女だ、ってな」
「…………」
「パステル……ごめん。ごめんな?」
 何も言おうとしないパステルを案じたのか、クレイが横で必死に頭を下げていたが。パステルは、静かに視線をそらすだけで、何も答えようとはしない。
 パステルみてえな女には絶対似合わないと踏んでいた、濁った白。
 口元からつまさきまで。俺達の欲望で全身を汚して。
 パステルは、空ろな目で、地面を見つめていた。
 ……こいつだって、それなりに、いい思いはしたはずなんだ。
 最後には自分から腰を振るようになっていた。自分から俺達を求めて動くようになっていた。
 まあ、自分で言うのも何だかが、手先の器用さには自信があるしな。クレイは、不器用ではあるが体力がある。何より、でかい。
 初めての相手としちゃ、理想的な相手だったんじゃねえか、とは思うんだが……
 まあ、パステルが何を考えているのか、なんて。それは、いわばどうでもいいこと。
「また、溜まったら相手してくれよ」
「おい……」
「あんだよ。クレイ、おめえまさか一発こっきりで終わらせるつもりだったのかあ?」
「……いや、それは……」
「すっきりしただろ? 溜まってるとイライラするしな。同じ男だからよーくわかるぜ。大体そういうときって、何考えてもろくなことになんねえんだよな。おめえだって、パステルを肴に抜いたことくらいあるんじゃねえの?」
「…………」
 図星だったらしく、クレイの顔が一気に強張った。そして、今となっては意味を悟らずにはいられなかったんだろう。パステルの顔も、同時に。
「また相手して欲しくなったら、声かけるわ。おめえもな、男が欲しくなったら遠慮なく言えよ? そんな相手だったらいつでもしてやるからな。なあ、クレイ?」
「……あ、ああ……」
「さて。お、そろそろ交代の時間だな。キットンの馬鹿を、起こしてくっか」
「…………」
 既にぼろきれとなった手ぬぐいで、パステルの身体を拭って、服を着せてやる。
 力の抜けた身体を抱き上げると、思った以上に、軽かった。俺の腕でもそう感じるくらいだ。クレイにとっては、なおさらだろうな。
「クレイ、戻るぞ。少しでも寝た方がいいだろ」
「ああ……」
「パステル」
 クレイを促しながら、一言も言葉を発しようとしねえパステルの顔を覗き込む。
 強張った表情は、俺から必死に視線をそらそうとしていたが。俺が、それを許さねえ。
「良かったか?」
「…………」
「それとも、痛かったか……? いきなりで悪かったな。怖かっただろ?」
 唇から漏れたのは、自分でも驚くくらいに、優しい言葉。
 それを言ったのがクレイではなく、俺だったということに、パステルはひどく驚いたようだったが……
「……ったよ……」
「ん?」
「よ、良かった、よ……」
「…………」
「怖かったし、最初は、ちょっと痛かったけど……でも……」
「そっか」
 その言葉に、俺よりも先に安堵の息をついたクレイに、皮肉げな視線を送って。
「そりゃ、良かったな」
 クレイと、パステル、両方に声をかけて。
 軽い身体を抱いたまま、俺は、何も知らずに眠りこける仲間の元へと、歩いて行った。


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